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Q1「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」を紐解く

★★★ CQ1すべての成人鼠径ヘルニアは手術が推奨されるか?

Answer
嵌頓症例あるいは嵌頓移行の危険が高い症例は全例手術が推奨される。嵌頓の危険が少なく*¹、症状の軽い症例では十分な説明のうえでの経過観察も許容される(推奨グレードA)。

※「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」20頁より
(ただし、*は筆者)

解説

① 治療の基本

成人鼠径ヘルニアに自然治癒はなく、方針は手術で治療するか経過観察していくしかない。

手術のリスク=ベネフィット評価を、病態や併存疾患などに基づいて症例ごとに行わねばならないことは、他の疾患と変わりはない。

② 嵌頓や疼痛などの重~中症状を有する症例の治療の適応

嵌頓の場合、生命の危険がある絞扼を伴うことが多いのでハイリスクでも緊急手術適応である。

疼痛などの、生活に困るような自覚症状を有する場合も、手術がハイリスクでない限り、原則として手術適応である。

③ 無痛性膨隆など軽症状のみの症例の治療の適応

軽症状の場合でも、治療の原則が手術であることに変わりはない。

しかし、手術を行わない場合の嵌頓発生、症状増悪の危険性の評価を行い、危険が高くないと判断されたなら、患者に十分な説明をし、理解を得たうえでの経過観察としても許容されると報告されている*2。

嵌頓の発生は、年間で1%程度と高率ではないが、発症3ヶ月以内 あるいは 50才以上の患者は比較的発生が高いとされている。

また、女性は嵌頓のリスクが比較的高い大腿ヘルニアの併存が少なくないことから、積極的に手術を勧めるとする意見もある。

④ 手術リスク評価の注意点

ヘルニア手術の致死率は待機手術で0.2~0.5%、緊急手術で4.0~5.8%とされている。

特に、ASA分類3~4の患者は緊急手術後の合併症発生率が高いとされている。

したがって、手術を行う場合は緊急事態となる前に待機的手術として行うことが望ましい*3。

※「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」20-21頁より
(ただし、太字への変更、下線及び*は筆者)

注釈*1

嵌頓の危険少ない:下記以外 ということになりますが、少なくはなさそうです。

嵌頓の危険が高い:鼠径部ヘルニア嵌頓・絞扼性ヘルニアの緊急手術の頻度はヘルニア手術全体の3.8~10.5%を占めており決して少ないものではありません。

大腿ヘルニア嵌頓は成人の絞扼性ヘルニアの34~56%を占め、大腿ヘルニアの36%を占めます。

大腿ヘルニアは女性の鼠径部ヘルニアの約20%を占めます(男性は2%)。そのため大腿ヘルニアの多い女性は相対的に嵌頓の危険が高く、早期の手術介入が望ましいといえます。

注釈*2

*2に関して→どちらを選ぶかは本人の意思が尊重されますが、リスク提示が必要です。

注釈*3

手術の方法も鼠径部切開法もしくは腹腔鏡手術、麻酔の方法も局所麻酔から全身麻酔、日帰り術から短期滞在手術など その組み合わせ(選択肢)は多岐にわたります。

嵌頓する確率は低率(1~2年で0.27~1.25%程度)とはいえ、嵌頓した場合に緊急手術適応となることから、基礎疾患がありよりリスクのある方ほどより安全な待機手術を選択するべきであると考えます。

高齢だから手術は出来ないと思っているのであれば、ヘルニア手術専門クリニックに相談してみてください。

高齢で心不全の余病ありとなると全身麻酔は困難ですので、局所麻酔で鼠径部切開法による手術を提案していきたいと思います。

ヘルニアは一般的に40才以上の男性に多く、そのうちの50才以上に嵌頓の発生が高いと言われています。

また、女性には大腿ヘルニアの併存も多いとなると、ほぼ全ての症例で積極的に手術を勧めるべきであるという ということになりますし、ヘルニアの専門家としても診断がついたのであればその時点で適切な手術を提案したいと思います。

論文には古いものから新しいものまで含まれています。

最近はCTによる診断能が著しく向上したため、鼠径部ヘルニアの術前診断はほぼ100%可能です。

また、麻酔技術や腹腔鏡手術の普及もあり、日帰り手術が可能な症例も多くあり、「日帰り手術」を選択肢の一つに加えていただければと思います。

★★★ 私が外科医として伝えたいことがここに記載されています。手術は全て危険を伴います。

患者さんからは良く「絶対大丈夫ですよね」と念を押され、その期待に応えるため、また、安心を与えるために「絶対大丈夫です」と伝えることもありますが、実際には絶対はあり得ません。

それでも可能な限り「絶対大丈夫」に近づけるためにより安全な方法、ここでは緊急手術ではなく待機的手術を予定するべきなのです。

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