Q15_3「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2015」を紐解く
★★★ CQ15-3腹腔鏡下ヘルニア修復術は鼠径部切開法と比較して合併症は同等か?
Answer
腹腔鏡下ヘルニア修復術は鼠径部切開法と比較すると周術期合併症は同等または増加する可能性があるが、術後合併症は減少する(推奨グレードB)。
※「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」46頁より
解説
手術に伴う合併症の比較は手技自体のほかの要素として手技の習熟度が大きく影響するため、評価が難しい。
High volume centerからは驚異的に低い合併症が報告されているが、RCTでないため評価は低いと考えられる。
合併症は、腸管および膀胱損傷、血管損傷等の周術期合併症と慢性疼痛、痺れ感などの術後合併症に大別されている。
報告されているRCTは腹腔鏡下ヘルニア手術導入当初のものが多いため、合併症の発生率は高めに報告されている可能性がある。
腹腔鏡下ヘルニア手術の周術期合併症発生率とLichtenstein法を主体とした鼠径部切開法を比較すると、同等と言う報告が多い。
ただし、初発片側例のみで解析にしたメタアナリシスでは、腹腔鏡下ヘルニア手術(特にTAPP法)が有意差をもって高いと報告されている。
European Hernia Society(EHS)のガイドラインによると、臓器および血管損傷といった重篤な合併症が腹腔鏡下ヘルニア手術(特にTAPP法)で報告されているが、有意差は示されていない。
このため、手術術式としてはメッシュ法を用いた鼠径部切開法、または経験豊富であれば腹腔鏡下ヘルニア手術を勧めると記載されている。
腹腔鏡下ヘルニア手術の術後合併症はすべてのメタアナリシスとEHSガイドラインで鼠径部切開法と比較して低いと報告されている。
※「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」46頁より
(ただし、太字への変更及び下線は筆者)
注記*
ここでの参考文献もすべて海外からの報告です。
以前=腹腔鏡下ヘルニア手術導入時期には手技も安定せず重篤な合併症も報告されたようですが、近年の手術手技は安定していると言えるでしょう。
注記**
術後の合併症に関しては腹腔鏡下ヘルニア修復術の方で頻度が低いのであれば、ファーストチョイスになって良い術式ですね。
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